無意味な検疫強化より病院機能を整備すべし!
H1N1豚インフルエンザの報道を見ていると「検疫強化をすべし」といった記事ばかりです。しかし検疫強化(熱や咳のある人を空港や港で見つけて隔離する)は過去の新型インフルエンザやSARSで通用したためしはないのです。
かつてSARSが騒がれた時、3500万人のスクリーニングが空港で行われました。はたして何人のSARS患者が見つかったでしょうか?
答えは“ゼロ”です。
WHO天然痘根絶初代対策部長であり、コリン・パウエル時代のアメリカ保健省最高責任者であるD.A. ヘンダーソンは今、ピッツバーグバイオセキュリティセンターの特別研究員をつとめています。このセンターから出された報告書には次のような要旨が書かれています。
1.“(パンデミーの)ごく初期に火を消し止めれば、限られた被害で抑えることができるかもしれない。しかし、穏やかでも燃える火を見逃せばもはや手に負えなくなる”は現在の人の流動性を無視した一元的な考え。
2.一人の感染者も入れないためには、すべての渡航を完全にシャットアウトする以外にはないが、実際には不可能である。
http://www.upmc-biosecurity.org/website/resources/commentary/2008-01-14-handcuffingflu.html
すなわち、検疫強化は意味がないと言っているのです。ですから「もう日本に入っているかもしれないから検疫を強化すべき」というのは明らかにおかしいのです。繰り返しますが、海外渡航の制限、危険力の渡航禁止" Le cordon sanitaire"は不可能であり、12か月から18か月もかかるであろう初期封じ込めの期間、すべての交通網、貿易を禁止することなど実現不可能なことを言っているにすぎません。
また、学校の閉鎖などの封じ込めが初期に行われるとされていますが、過去のインフルエンザの流行でこうした封じ込めが有効だったケースはありません。
ですから日本に今回の豚インフルエンザが入ってきたら、必ず広がると思って対応すべきなのです。1918年のスペインカゼ同様の大流行が起こったとすると、普通ベッドは通常の191%必要であり、ICU(集中治療室)は461%必要、人工呼吸器は198%必要だとしています(米国試算)。
この数字にあう機能を備えられる病院はほとんどないでしょう。仮にそろえられるとしても今の医師不足、医療スタッフ不足でどう対応するというのでしょうか?
メキシコでは25歳から40歳という働き盛りが死亡しているようです。もし日本で流行が起こったら、休息に日本の国力を担う世代を失うことになりかねません。
幸運にも今回の豚インフルエンザがパンデミーを起こさなかったとしても、いずれ大流行を起こす新型インフルエンザや新しい感染症はやってくるでしょう。そのためにも無意味な検疫強化で国民を欺くことだけはやめてほしいです。
2009年4月25日