小さな政府論がもたらしたもの
アメリカのオバマ大統領が就任してから2か月が過ぎました。オバマ政権の売りは、なんといっても医療政策でしょう。特に貧困層にも行き渡る医療制度改革を掲げています。今までのアメリカは、「小さな政府」をめざしていました。小さな政府とは政府の関与をなるべく少なくし民間に政策をまかせる、というものです。アメリカのレーガノミクス、イギリスのサーチャノミクスなどはこの典型です。
しかし、小さな政府主義が何を生んだのかといえば、教育の荒廃と医療の崩壊です。それは、国が一番重要な政策にもお金をかけなかったからです。
今から20年ほど前、日本は小さな政府を目指し始めました。これと同時に医療費抑制が声高々に叫びだされました。私がアメリカにいるとき、ヒラリー・クリントン上院議員は国民皆保険をアメリカに導入しようとしていました。
この歴史的な時代に私はワシントンDCに程近い場所で、日本代表として日本の医療制度を発表することになりました。今考えれば何とも不思議な偶然です。
アメリカはじめとする欧米はもはや小さな政府から大きな政府に移行しつつあります。それは、医療と教育にお金をかけなければ国が成り立たないことを嫌というほど味わったからです。
戦後最大といわれる経済不況の中、国を立て直すために医療にお金をかけなければ国力が衰えると知って方向転換するアメリカ。国民はどうでもよい、国は滅びても自分たちの利権さえ守れれば良いとする日本の官僚体制。はたしてどちらに危機管理能力があるかは一目瞭然でしょう。
ちなみに、まだ医師不足が叫ばれていなかった頃、「医師増加は医療費増大をうむ」として小さな政府をめざしたのは厚労省の事務次官です。医師であり作家の李啓充氏が指摘するとおり、この元次官の責任追及がされないのはおかしなことです。
2009年4月5日