新年早々、水際作戦増強か?
年明け早々厚生労働省の22年度予算案をみたら、新型インフル対策のところに
検疫のマンパワー増強として新規の予算がもりこまれていました。
少額ですがそこには、いまもって「水際」ということが書かれていました。
これに対比されるのがタイ政府の見解です。
1月2日のタイの英字新聞Nationにタイ政府の反省が掲載されています。
http://www.nationmultimedia.com/2010/01/02/national/national_30119580.php
The ministry learned that using infrared thermal scanners to screen
people with influenza-like illness at the country's main gateways,
such as Suvarnabhumi Airport, was totally ineffective."The ministry thought that this machine could detect people with the
new flu virus and check the pandemic. In fact, it was absolutely
ineffective," he added.Kamnuan said the ministry's health experts had tried to inform the
government that there was no need to use the thermal scanner, but the
government wanted to reassure the public that it had done something
concrete. However, the result was the opposite.
「市民や医療者が政府の言うことにどれだけ信頼を寄せられるかは、
このような態度・コミュニケーションにかかっているのではないかと思う次第です」
とは堀成美氏の言葉ですが、全く私も同感です。
2010年1月4日
高齢者に対する新型国産ワクチン副反応警報
世田谷区若手医師の会では、以下のように今全員に周知しました。
あるクリニックでは、ワクチンを受ける人に同様の内容の文書を渡すことににしました。
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**新型インフルエンザワクチン接種をされる方に
☆季節性のインフルエンザワクチンの安全性は、数十年という長い経験から安
全であることが分かっています。
☆しかしながら、この新型インフルエンザワクチンについては、まだ安全性
ははっきりとは確認されていません。
☆今までの蓄積から、小児、妊婦、健康成人に対する安全性はあるようです
が、高齢者で現在の健康状態が良くない場合には、副反応(副作用)が強く出る
場合が報告されています。
☆本日は、接種可能と医師が判断して行いましたが、接種後48時間は、ご本
人に体調の変化がないかどうか確認して頂ければ幸いです。
★急激な頭痛、意識障害、呼吸困難などあった場合には、すぐに119番にて救
急隊をお呼びください。
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2009年12月5日
新型インフルエンザワクチン(MRIC)
▽ 新型インフルエンザワクチン導入の意義は何か? ▽
厚生労働省医系技官 木村盛世(きむら・もりよ)
2009年10月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
http://medg.jp
「人間は真実を見なければならない。なぜなら真実は人間を見ているからだ」
―ウィンストン・チャーチル
巷では新型インフルエンザワクチンに関する議論が真っ盛りである。インフル
エンザは入ったからには必ず広まる。100%有効な予防法はないし、特効薬もな
い。その中でやるべきことは既存の方法を組み合わせて、広がりの程度をできる
だけ小さくすることである。それ故ワクチンも有用なツールの一つとして挙げら
れる。ワクチンの効果はどの程度なのか、副反応はどうなのか、そして1回うち
が良いか、2回にすべきかといった議論が新聞の紙面をにぎわすと、国民のワク
チンに対する期待と不安もおのずと高まってくる。そしていつの間にか「新型イ
ンフルエンザワクチンを打つと罹らない」とか「ワクチンで重症化が防げる」と
いった世論が形成されてしまった。そこで本稿では、ワクチンの効果はどのよう
にして判定するのか、なぜワクチンが必要なのかということについて論じてみた
い。
豚由来のAH1N1インフルエンザウイルスは流行を初めてまだ間もない。このウ
イルスについて人類はどれだけのことを知っているのだろうか。人為的に捲かれ
たものではなく、自然発生的なウイルスであること、今のところ病原性は通常の
インフルエンザと大差ないこと、若年層が罹りやすい、くらいのものである。ワ
クチンの効果にしても本当のところは誰も知らないのである。
それでは、ワクチンの効果とはどうやって判定するのであろうか。ワクチンの
有効性についての議論は近代疫学の歴史とともにあるといってよいだろう。疫学
とは「因果関係のあるなしを調べる」学問であるが、「ワクチンの導入により、
病気の発生が少なくなった」ことを立証することが近代疫学モデルの代表といっ
てもよいのではないだろうか。公衆衛生とは、個々人の健康問題にフォーカスを
あてるのではなく、国民ぜんたいあるいは地球上の人間に視点を当てることを第
一義とするが、疫学は公衆衛生を論じるのになくてはならない学問である。なぜ
ならば、公衆衛生とは厚生行政そのものであり、厚生行政の運営に際して科学的
根拠を与えるのが疫学研究だからである。それ故、疫学とは人間の大集団を研究
対象とする。
ワクチンの評価モデルとして確立されたのは結核ワクチンについての研究だっ
た。結核はエジプトのミイラからも発見されている、人類と一番付き合いの長い
感染症である。近代疫学は19世紀から20世紀にかけて花開いたが、世界のトップ
をゆくハーバード大学、ジョンズ・ホプキンズ大学に公衆衛生大学院はこの時期
に設立された。公衆衛生大学院は結核対策のエビデンスを政府に提供するために
つくられたのである。当時、結核はアメリカ合衆国はじめとする先進国にも大き
な脅威であったので、これを抑えるのは国家の存亡にとっての重大事であった。
結核対策の星として期待されたのは結核ワクチン(BCG)であった。BCGに関して
は既にいくつかの論文が出されていたが、国策としてBCGワクチンを導入するか
については、大集団を用いた大掛かりな調査研究が必要だと判断された。
これを受けてUSPHS(United States Public Health Service)は、各地でBCG
の有効性についての大規模前向き研究を開始した。ワクチンを打つ群と打たない
群に分けて経過を観察し、どちらの群からの結核発生が多いかを比較したのであ
る。アメリカだけでなく英国、北欧、アジアの諸国とも合同した研究が開始され、
20年にわたるフォローアップを終えてBCGワクチンの効果が判定された。この結
果ワクチンの効果は-20%から100%と開きがあり、「効果については不確定」
との結論が出された。
このような研究(RCT)から得られる効果をefficacyと呼ぶが、現場で使う場
合の効果(effectiveness)はefficacy より低くなる。このためefficacy平均
90%以上が有効なワクチンとされるのが通例である。この結果を受けて、アメリ
カ合衆国や主要先進国はBCG集団接種を導入することを止めた。それでは、この
研究結果は実際の対策にどのように反映されているだろうか。日本は「結核中進
国」と位置付けられている。アメリカなどの主要先進国と比べると新規発生患者
率と比べると10倍以上多い。わが国でのBCG接種率は100%である。この事実から
みて、疫学調査を元に得られたワクチンの有効性に基づいて政策を行う国とそう
でない国との差異は明らかである。
ワクチンの有効性は、BCGワクチンで行われた前向き調査によってのみ判定可
能である。 抗体価の上昇がワクチンの有効性を示すかのような報道や政府見解
が示されているが、抗体価との因果関係における疫学的確証はない。もしその関
係を立証したいのであれば、ワクチンを打つ群と打たない群とに分け、前向きに
追ってゆくとともに抗体価を調べる以外にはない。
しかし、インフルエンザには他のタイプのウイルスとの混合感染があり、結果
の解釈が難しいと共に、現状でワクチンを打たないという選択肢が社会的に認め
られるかという大きなハードルがある。同様の方法で行われているHIV/AIDSワク
チンの研究が行われているが、インフルエンザとは状況が違う。抗体価とワクチ
ンの有効性についての仮説が独り歩きしているのは、BCGワクチンの有効性とツ
反の大きさが無関係ではあるのにもかかわらず「ツ反で陽転したら結核に罹らな
い」という間違った考えが独り歩きしている現象と同じである。「ツ反で硬結の
大きい人からは結核発病が多い」という事実と混同されているのではないかと思
う。
新型インフルエンザワクチンの有効性について確実にいえることは、100パー
セントの効果を求めることは難しいということだ。100%近いefficacyを持つワ
クチンはそれだけで疾患を根絶する。天然痘ワクチンがその例だ。天然痘はワク
チンのみで全世界から根絶された。しかし、インフルエンザがワクチンで根絶さ
れたという話はきかない。仮に有効なワクチンが生産されたとしても、インフル
エンザウイルスは変異しやすい。この事実もワクチンの現実世界での有効性
(effectiveness)を低下させる大きな要因であろう。
重症化を抑えるという議論もあるが、これについても前向きにみて行かないと
結論の出しようがない。また重症化の基準についてもケースバイケースであろう
し、もともと基礎疾患を抱えている人たちであるから他の薬をワクチンと同時に
使用することは多いであろう。この場合純粋にワクチンのみの効果を検証するこ
とは極めて難しい。
今まで述べてきた状況下で、ワクチンはどうしても必要なのだろうか。筆者は、
ワクチンの有効性の議論は度外視しても全国民分用意することが必要だと考える。
それは2つの理由からだ。第1に、現状のような新型インフルエンザパニック状
態では国民に安心を与えるという意義は大きいということである。もし仮に用意
したワクチンが無駄になったとしても、国民のパニックを防ぐことは危機管理の
初歩である。第2に、今回のワクチン全国民導入を機会に、諸外国から大きく立
ち遅れている我が国のワクチン行政を進歩させる目的がある。どんなワクチンに
も副反応が伴うが、国民全体を病気から守るという国益がリスクを上回った時に
導入するのがワクチンである。それ故、ワクチンは公衆衛生学的手法である。現
制度化では、重篤な副反応が起こった際にも訴訟という手段でしか解決の方法が
ない。しかしワクチンの基本理念からすれば、副反応が生じたからと言って国や
製薬会社が訴えられること自体がおかしい。そうであればアメリカに倣って免責
制度を導入することが国にとっても国民にとっても泥沼の争いを避けることにな
るだろう。また、現状では雀の涙程度しか補償されない保険制度も抜本的な改革
が必要である。
最後に、具体的な導入の仕方であるが、1回では不安が強いという国民感情を
鑑みれば原則2回うちとすべきであろう。ワクチン接種するかしないかは国民の
判断に任せるべきであるが、副反応など、意思決定のための正しい情報はきちん
と開示すべきである。また、国民を守るという公衆衛生の根本から考えれば、ワ
クチン接種は原則無料化が筋だと考える。
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今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いた
だけましたら幸いです。
MRIC by 医療ガバナンス学会
http://medg.jp
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感情的になるワクチン論争の果て
WHOとカナダ政府が健常成人のインフルエンザワクチン1回接種を決めました。わが国でも1回打ちか2回打ちか、誰から打つのか、足りるのか、といった報道が毎日駆け巡っています。
果たして私たちは新型インフルエンザワクチンの効果についてどれだけ知っているのでしょうか。答えは「ほとんどわからない」です。
ワクチンは病気に罹るのを防ぐ、予防の意味で使われます。その効果は?というと、ワクチンを打つ、打たないの2つのグループに分けて、病気の発生の違いを比較することによってのみ知ることができます。
しかし、これだけワクチンに対する期待度が高まると、打たないという選択肢が受け入れられるかどうかという問題があります。それから、インフルエンザは他の種類のインフルエンザウイルスによる混合感染があったり、季節性ワクチン打ってあったり、と新型ワクチンのみの効果を調べるのは至難の業です。
重症化を防ぐと言っている人もいますが、何をもって重症化とするのかという問題があります。また、基礎疾患を持っている人は消炎剤や抗生剤、抗ウイルス薬使う場合が多いですから純粋にワクチンの効果を調べるのは無理でしょう。
それから、抗体価が上がるイコールワクチンの効果があるという議論も曲者です。先ほどの打った打たないの群の中で抗体価も調べて、罹らなかった群の抗体価が高かったというデータでもあれば良いですが、そんなものはどこ探してもないでしょう。
一つ言えることはインフルエンザワクチンは100%の予防効果はないということです。もし100%予防ができるワクチンなら既にインフルエンザウイルスは地球上から根絶しているはずです。
厚労省がやることは、何が何でも国産4社を守るべく1回接種にこだわるのではなく(このような基準は学会に任せればよい)、できるだけ国民全員にいきわたるようにワクチンを確保すべきことです。たとえ使わなかったとしても国民は全員分あるということで安心するからです。
国民にパニックを起こさせないことは危機管理の基本です。官僚が自分たちの既得権益を守ることに躍起になって肝心の仕事を忘れてしまっているようでは困ったものです。
2009年10月30日
新型インフルエンザ 記事バックナンバー
これまで新型インフルエンザについて掲載してきた記事のバックナンバーとなります。
■補正予算という甘い汁2009年10月9日
□妊婦にインフルエンザワクチンは禁忌?2009年10月5日
■ワクチンは国産?それとも海外製?2009年9月28日
□どこまで続くインフルエンザワクチンの利権争い2009年9月22日
■感染症学会へ~現場の声~2009年9月17日
□果たしてワクチンは輸入されるのか?2009年9月12日
■上田局長と田代眞人氏 その甘い関係2009年9月11日
□ 濃厚接触者という概念2009年9月1日
■国民無視の上田健康局長2009年8月28日
□適正な対策とは2009年8月24日
■舛添厚生労働大臣へ2009年8月20日
□いつまで検疫を続けるつもりか?!2009年8月15日
■意味不明の政策転換2009年6月25日
□フェーズ62009年6月12日
■厚労省健康局長が残したもの2009年6月3日
□臭いものには蓋をする隠ぺい気質2009年5月25日
■感染症WBCで負け続ける日本2009年5月23日
□今の政府がやるべきこと2009年5月19日
■政府の対策は経済機能をマヒさせる2009年5月18日
□検疫を主張した人の責任はどこに?2009年5月16日
■患者のプライバシーには十分な配慮を2009年5月16日
□いっそ鎖国したらどうでしょうか?2009年5月10日
■3人の国内患者2009年5月9日
□学校閉鎖は役に立たない2009年5月8日
■弱い者は犠牲になってもよいという事務連絡 2009年5月6日
□新型インフルエンザ疑いという「汚名」 2009年5月5日
■新型インフルエンザワクチン 2009年5月3日
□大切なのは正確な理解 2009年5月2日
■厚労省が新型対策としてしなければならないこと 2009年5月1日
□新型インフルエンザの国内発生第一号か? 2009年5月1日
■危機管理とは最悪の事態を想定すること 2009年4月29日
□新型インフルエンザで騒がれる“検疫”とは何か? 2009年4月28日
■新型(豚)インフルエンザにかからないために 2009年4月27日
□無意味な検疫強化より病院機能を整備すべし! 2009年4月25日
■新型(豚)インフルエンザのパンデミーは時間の問題か?
□豚インフルエンザ出現!